やなぎょん 政治経済を勉強中!

最近は「政府の財源」について勉強しています.勉強不足・間違いがあるかもしれませんが,あくまで備忘録として公開していきます.経済のエキスパートの方からは,是非優しいアドバイスをお願いします.

6.結局,MMTとは何だ?(後半:政策実行)

MMTについての悪い風評としては,「MMT推奨派はとにかく国債を乱造して,何も考えずに平気でいる.財源のことは全く頭にない」だろう.以下に,これが表面的な理解,すなわち風評被害である事を記す.

 

5で述べたとおり信用創造の原理から,「信用創造による預金の創出がまず先に生じ,その後に政府による徴税行為ある」.あくまで原理的には,政府は税金を財源にする必要がないのである.このブログでは,MMTが成立することを利用して,「税金を政府の財源にする必要はない[1]」という側面を掘り下げていく.この,『税収≠財源』というのが,政治方針の根幹を作り変える,大きなパラダイム・シフトである.逆に,『税収=財源』という政治方針は,商品貨幣論金本位制や,古典的物々交換論)に完全に縛られた,化石のような方針であったことが徐々に分かってくるだろう.

 

[1] 中野剛志「奇跡の経済教室」や大西つねき「私が総理大臣ならこうする」等.

 

もちろん,MMTが成立するためには以下の厳然たる条件を満たさなくてはならない.それは,

 

(0) 金本位制などではないこと+戦争して占領されないこと(大前提)

(1) 自国通貨立て国債が発行できる財政民主国家であること(=いつでも政府が信用創造をできる状態にあり,いつでも金融政策が打てて,いつでも税率を変更できること)

(2) 為替変動性が正しく機能している事(他国との著しい為替格差が存在しない事.外国に買わせた自国通貨建て国債を「借り換え」できなくなったり,信用不安が起こるリスクがあるため)

 

である.まさに,「(0)(1)(2)を満たす貨幣=現代貨幣」を使える国でないと適応できないので,MMTと呼ばれる.通貨が現代貨幣であれば,「国債の返済期限が来たら,新しい国債信用創造によって発行して借り換えをする」ことで,絶対に債務不履行にはならないので[1],この理論が成立する.この理論の傍証として,今の日本が先進国に比べGDP比でダントツの赤字国債を抱えつつなお,デフォルトの気配すらない事もあげられる[2].

[1] 財務省もこの事実は認めている

[2] ステファニーケルトン教授の発言

 

なお,条件(1)を満たさない例として,ギリシャやイタリアなどは,貧国ではないのに,通貨発行権を持っていなかった(のでデフォルトした).言うまでもなくユーロを使っていたからである.また,ジンバブエベネズエラ独裁国家だったので,極端に生産性が落ちてしまったので,これと比較するのも的外れである.特にジンバブエは自国通貨発行権自体を放棄せざるを得ない状況まで陥った(公務員の給料をアメリカドル立てで払っていた).

 

MMTでは財政赤字を財政規律とはしない.それは当然,「どんな経済政策をとっても赤字は確実に増えていき」「どんなに赤字を増やしてもデフォルトはしない」という事を背景にしている.

 

MMTにもしっかりとした「財政規律」は存在する.MMTはインフレ率『のみ』を財政規律にする(プライマリーバランス戦法とは全く相容れない).つまり,「財源は気にせず」かつ「インフレターゲットを行う」だけである.インフレターゲット自体は今の安倍政権も行っているし,おそらく立憲民主党などに政権交代しても,結局やることになるだろう.

 

結局MMTとは,「成熟国家は国債の発行を止めることはできない厳然たる事実を認め,且つインフレ率がコントロール下にある場合はデフォルトはない」というだけの理論である. 後はインフレ・ターゲットの技術を洗練させて行けば適切な財政規律を生むことができる.特に,一旦デフレを脱却してしまえば,そこにはアクティブな需要が存在するため,教科書的な短期金利の制御等でインフレを細かくコントロールできる.

 

もちろん,インフレターゲット自体は細心の注意で行う必要がある.インフレがどれだけ進んでいるか(あるいはどこから「爆発」するか)を見定める指標は,「失業率」である.この理論は完全に「主流派の経済学」に立脚する.この理論は,まずインフレ好景気によって失業率を下げていき,完全雇用に近づく少し前にインフレが加速するポイント(インフレ非加速失業率)の辺りまで財政出動を維持し,それに近づいたら金融引き締めを行ったり財政出動をやめてインフレ率を収束させれば良い,という事である.以下のグラフの通り,失業率が下がらずにインフレ率だけが上昇しだす所がクリティカルな止めどころである.インフレターゲットで何を気をつけなければならないかがこのグラフからよく分かる.

https://twitter.com/yoichitakahashi/status/945609696622157825 

 

ところで,このブログでは一貫して『税金≠財源』を主張してきた.では,税金は不要だろうか?実は税金はこのインフレターゲットを安定化させる道具として使えるのである(続く).