やなぎょん 政治経済を勉強中!

最近は「政府の財源」について勉強しています.勉強不足・間違いがあるかもしれませんが,あくまで備忘録として公開していきます.経済のエキスパートの方からは,是非優しいアドバイスをお願いします.

8.「国の借金」を少しずつ削る方法

ここまで読んだ方は,MMTが実践的だとわかっただろう.もちろん,具体的なインフレターゲットについては,主流経済学の力が必要である.MMTの功績(の限界)は人類に「資本主義に必要なのは高精度・高安定のインフレターゲットを考えることで,デフレを維持する必要はないよ」という認識を与えた事であり,それ以降の具体的インフレ問題は人類が真に創意工夫して探っていくべきものだろう.

 

MMTインフレターゲットは別段階の問題で,互いに矛盾しないということである.

 

また,MMTの基礎づけは定性的な需給バランスの問題と「信用創造」という,2つの最も経済学で基礎的な概念のみで構成される.だから,偶然にも数式を使う積極的理由がなかった.だから,『MMTは数式が出てこないから定量的ではない』というのはその通りなのだが,『数式が出ないから,ダメ』という批判は全く的外れである.数式を用いた議論が必要になる以前の段階についての基礎的な認識を正していく必要があると,MMTは言っている.

 [1] フィリプス曲線は出したが,あれはあくまでインフレターゲット以降の議論に必要になる.インフレターゲット自体はしっかりとした数式や定量性が必要である.

 

おそらく「主流派経済学」はそもそも「信用創造」という概念すら正確に捉えていないか,商品貨幣論との混同も起きていると考えられ,流石にそれらの点ではMMTとは完全に相容れないだろう.MMTの本丸は国定信用貨幣論(国の通貨発行権を全ての出発点にする)なので,通貨発行権を本質的に認めていない商品貨幣論とは水と油である.詳しくは該当リンクを参照されたし.

 

MMTは「(国定信用貨幣論に基づいて)信用創造という最も基礎的な概念を余すことなく使い倒す」ので,「新しい概念をほとんど言ってないじゃないか」という見方(ある種の批判)が,実に正しいのであるMMTは今まではっきりとは認識されていなかった信用貨幣論の真髄を見出したということである.また、主流派経済学が金科玉条のように振り回すプライマリーバランスが国民生活にとっては害悪でしか無いから,新たに声を上げている.プライマリーバランスは商品貨幣論に立脚しているので,根本的に間違いである.

(信用貨幣論が根本的に分からない人はこの記事を見ると分かるかもしれない)

 

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では,MMTをさらに掘り下げて,新しい事を行ってみよう.

それは,政府紙幣を導入することである.

https://www.youtube.com/watch?v=fjA85_DgyQc

(↑このブログよりも詳しくて正確な,大西つねき氏の解説動画)

 

 政府紙幣を使うと,政府の日銀当座預金に「数字を書き込んだ分だけの金額」が『預けられ』る[2].大西氏の動画の例では100兆円を毎年政府の預金に金額を書き込んで,それを政府の収入として扱う.すると,国債を買い上げるための『財源』が生まれる.だが,民間預金額が変わるわけではないので,すぐには市場への影響は無いと思われる[3].これを十年ちょっと繰り返すと,国債は消滅する!

[2] 実務的には単に数字を書いただけであるが,これは信用創造と本質的に同じ行為である.

[3] 市場に流すには,公共事業発注をしたり,ベーシックインカムとして民間の預金に『預ける』だけで良い.インフレ率だけが注意である.

 

「そんな乱暴な事をしたら信用を失ってハイパーインフレになる!」と思う人はこちらこちらの記事も参照されたし.

 

これを『国債銀行への借金』という文脈で考える.この動画文字起こしの後半で述べられている事実は,現在日銀は国債を銀行から半分以上も買い上げて保有している,ということである.にもかかわらず,利率,物価,国債相場に大きな影響は現状でていない.日銀と政府の間で意思統一が成されているのならば,買上げを更に推し進めて,国債のほとんど全てを買ってしまってもおそらく状況は同じだろう.後は銀行が,国債で買い上げられてしまって押し付けられたお金を[4],自分たちがお金を押し付けられる前に保有していた金額に戻るように使い込む[5]か民間人に『寄付』すれば,上記の段落で述べた操作の途中までは行けるのである(結局は政府紙幣で帳尻をあわせる必要はでてくる).要するに,銀行だけが損を飲み込むことさえできれば,それ以外に大きな影響はないのである.

[4] 銀行などの機関投資家は,基本的に現金を持ちたくない(常に債権を持ちたい).なぜなら,現金は持っていても増えたりはしないのである.お金持ちが何もせずに儲ける(不労所得)ためには,お金を他人に貸すしかない.特に今はデフレなので,銀行が日銀からお金を押し付けられると,貸し手が見つからなくて困ってしまうのである.

[5] 格差拡大のリスクさえ気にしなければ,得られたお金を使って銀行員(=経営者側を含めた,全ての行員)の給料として与えてしまっても[6],長い目でみれば同じである.あるいは,銀行が他の民間企業へ「架空発注」したり,懇親会を開いて20万円の利益供与する,等でもいいだろう.だったら最初から国民にばらまいた方が良い.

[6] 短期的には,銀行員が瞬間的に億万長者になって,離職者だらけになり,銀行が解散する.だから,銀行員の公務員化を前提にしないのであれば,この操作は銀行員の数を少しずつ減らしながら,ゆっくりと行う必要がある.いずれにせよ,これらは具体的な政策をどうしたいかのレベルの話であって,民主主義的に決めることであり,政府紙幣を政策実行できるか,できないかという話ではない.

 

さらに大局的に考えてみよう.そもそも国債とは,国の公共事業を行うたびに,国債を保持する銀行などの機関投資家に利子を儲けさせる装置である.一方,政府紙幣を使って国債を完全に置き換えてしまえば,何年預けても利益を出さないお金が生じる(ブタ積み)[7].もちろん,政府紙幣&現代貨幣(日本のお金)は両方とも,「お札としての実体は無い」ので,区別はつかない[8].だから銀行が文句を言わない限りにおいては,政府紙幣発行は大きな問題にはならない[9].さらに踏み込んで,銀行員を公務員にしてしまうというプランも出てくる[10].

[7] だから,人々を悩ます『借金』がどこにも生成されないのである.

[8] したがって,混ざって困る事もない.一度民間の手に渡ってしまえば,政府紙幣も民間預金も本質的に同じである.

[9] もちろん,金利を見張る必要は常にあるが,それは簡単な金融政策(金利操作)で対応可能だろう.

[10] 大西つねき氏の解説動画

 

以上から分かることは,市場の需要拡大インパクトさえコントロールできれば,『国の借金』はいくらでも減らせるということである.この国債消去操作から逆説的に,国債を「国の借金」として恐れる事が,如何に馬鹿らしいかが分かる[11]財政破綻論者はこの事実をどのように捉えるのだろうか?こういう操作が可能だと分かってしまえば,MMTのような理論が出てくるのも全く驚かなくなるだろう.もちろん,政府紙幣を使ってこのような消去ができる国は限られている(基本的には債権国=海外にお金を貸している国,つまり日本である)という裏事情はあるが,それは大西氏の多くの動画で度々説明されてるので,興味のある方は探してみてほしい.

 

[11] どうしても恐れるものが欲しいならば,高インフレと(全ての)デフレを恐れてほしい.これらだけが公共の害で,それ以外は人の生き方の問題(政治思想の問題)である.

 

【重要な補足】

ただ,財政赤字を放置しなかったために良いことも起きる.

 

1つ目は,大西つねき氏の動画でも言われている事だが,「国債=世代間の格差拡大装置」という事実である.国債は早く生まれて早く買った方が利回りで儲けるには有利だからである.この性質は「国債は未来の子たちへのツケ」という側面を正しく反映している.「ツケだから,税金で返そう」というのは本当に愚かな間違いであると断言できるが,「絶対に返済を要求されないツケだから,いつまでも返さなくて良い」というのも,絶対悪ではないが,あまり良いことではない.

 

2つ目は,あくまで私の意見だが,「国債がたくさんあると,デフォルトするんじゃないか」と感情的に不安になる人を減らすことができる事である.これは本当に感情的な問題に過ぎない事をMMTは論じてきた.だが,政府紙幣を使えば,その感情すらも解決できる.裏を返せば,これまで大手メディアのプロパガンダによって,国民は国債=国民の借金という無意味なトラウマを植え付けられていただけなのである.大手メディアも本気で勘違いしていたのだろうからそれを断罪する意味はないが[8],彼らにはMMTを迅速に国民に知らしめる責任がある.厳しい言葉だが,現在以降にMMTをきちんと報じない(か,理解しようともせず,感情的に叩いてしまう)ようなメディアは反社会的勢力であると言っても過言ではないだろう.既にMMT成立に十分な証拠や根拠が揃い,且つ海外でもMMTの機運が高まってきているのだから….

[8] 彼らも「国民」の一部なので,ある意味では被害者(自傷行為)である.