やなぎょん 政治経済を勉強中!

最近は「政府の財源」について勉強しています.勉強不足・間違いがあるかもしれませんが,あくまで備忘録として公開していきます.経済のエキスパートの方からは,是非優しいアドバイスをお願いします.

12.MMT批判者の中には,国民の理性を本質的に疑っている人もいる

 

※この記事はMMTが分かっている人にとっては全くおもしろくない,愚にもつかないような議論なので,熱心なMMT批判者以外は読まなくて良い.

 

 

加谷珪一氏の興味深いMMT批判の記事を見つけたので,私なりにコメントをしたい.

この記事では「MMTがなぜ経済学的に正しい方法なのか?」については議論しない.

 

加谷氏の書き口は非常に冷静で,MMT推進派としても読んでいても心地よいものである.また,彼は他のMMT批判者のように些か突発的インフレを恐れすぎている(インフレ恐怖症)傾向こそあるものの,「MMTは理論上は可能である」と,経済学に対しては,極めて理性的な見解をお持ちのようである.彼こそまさに,

MMTは経済学的には何の不足もなく,実現が可能である」

と言っている(あくまで,経済学的な観点からは,である).彼はMMT推進派ではないが,MMT肯定派(実行は非推奨派)であるとは言えるだろう.また彼は,国民がインフレ時でも痛みを伴う改革に賛同できるのならば,MMTは机上の空論とは言えないだろう,とまで言っている.これはMMTに対する極めて強い肯定である.

 

では,彼の批判ポイントは何であろうか?なんと彼は,要約すると

 

「日本人は予算を冷静な判断で決定できないから,MMTなどが広まってしまうと,情緒的になって無限に金銭を要求するようになる.よって,MMTは日本では成立しない」

 

という見解なのである.このタイプの批判については,中野剛志氏は動画で「財政民主主義自体を否定する,全く論外な批判」と一蹴している.また,中野氏は「日本はデフレ下でも消費増税できる国だから,インフレ下で増税できないなんてことはありえない」と述べている(三橋貴明氏も同意見).

 

良識的なMMT批判者は,中野氏の批判がほとんど妥当であることが分かるだろうから,ここで読むのをやめて,他の記事に進んでいただきたい.以下の文章は単なる思考実験(空想)である.

 

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ただ,この中野氏の反論はある意味では完全ではない.例えば加谷氏のようなタイプの批判は,実は経済学的な批判ではなくて,極めて政治学的な批判であるからである.つまり,中野氏は極めて優れた経済学者であるとは思うが,そんな中野氏であろうとどんな頭脳明晰な人であろうと,個人の立場では絶対に答えられないようなMMT批判なのである.

 

というか,この加谷氏の批判に答えられる個人は誰もいないと思う.加谷氏のMMT批判は要するに,

① 政治家は,国民の利益を自発的には考慮せず,ただ選挙で受かるという保身のためだけに行動する

② 国民は,自分の将来について全く理性的な判断が下せず,国が滅ぼうがどうしようが目先の利益だけを追求する(国民の大半がエゴイストである)

 

………  書き下してみると,加谷氏は国民や政治家をどの様に見ているかがよく分かる.要するに加谷氏は,今や未来の日本国民は歴史に学ぶことのできないような,バカなエゴイストが大半だと言っているのである.氏は民主主義に対して,真っ向から挑戦状を叩きつけているのである.そう考えると,彼は結構過激な思想の持ち主なのかもしれない.

 

では,上記の①は全面的に肯定してみよう(笑).というか,①は別に成立してしまっても大きな問題ではない.悪徳政治家だろうがなんだろうが,国民が選んだ政治家が議員になって,何が問題なのだ,という話である.愚直なまでの,民主主義の完全なる肯定である.衆愚政治かもしれない.

 

問題は②である.果たして我々は,本当に自分の目先の利益ではなく,長期的な利益まで見据えて投票行為ができているのだろうか….

私も胸に手を当てて自分の行いを振り返ってみた.結果私は,当時の知りうる知識の範囲で私なりに国益を考えて投票したことが理解できた.根拠は,私は前回の参議院選挙では,れいわ新選組に投票していなかったからである.

 

私は前回の参議院選挙時点ではMMTを受け入れていなかった.過去の私は,拡張財源路線に最も批判的だった,典型的な「財政破綻論者(財源リアリスト)」だったのである.そこへ来てれいわ新選組の党是は最初から,「消費税廃止」「最低賃金1500円」などの,財政破綻論者には論外と思えるほどの拡張財源路線だった.だかられいわ新選組に投票するのはためらった.これは(MMTを理解していなかった,当時の自分としては)理性的判断と言えるであろう.また,これを読んでいるあなたがもし冷静な財政破綻論者ならば,私の言っている事はすぐに理解できるだろう.また,現在は強固な財政破綻論者である人は,今後は他の誰よりも深くMMTを理解する可能性がある.だから私は,財政破綻論者にこそ,MMTを勧めたいと思っている.

 

また他の観点として,党首がタレント議員だったから,どうせまともな政治などできるはずもない,と思ってれいわ新選組に投票しなかった人も多いだろう.それはそれで常識的な判断なので,そういう人も加谷氏提唱の②(バカ)には絶対当てはまらないだろう.さらに変化球で,「山本氏が偽善者に見えるから,嫌い」という人も居ただろうが,偽善を嫌う人の本質は紛うことなき善なので,全くエゴイストではないので,これも②ではないだろう.

 

では私個人やあなた個人の話はこれくらいにして,一般の有権者にまで話を拡張して考えよう.どう考えても,れいわ新選組の党是を知っていて,且つ②に当てはまるような浅はかなエゴイストであれば,れいわ新選組に投票していただろう.だがそもそも国民の多くは,れいわ新選組に投票していない.もちろん最初から財政破綻論者じゃないのに(MMT推進派なのに),れいわ新選組を避けた人もいたかもしれないが,それは流石に超少数派だろう.なぜならば,「れいわ新選組を嫌うMMT推進派は,N国党かオリーブの木幸福実現党はおそらくリフレ派),あるいはそれ未満の諸派などの,緊縮財政志向かどうかすらも分からない政党に入れるしかないからである」.老舗政党は押し並べて(最左派の共産党も含めて)明確な財政破綻論政党(緊縮政党)だからである.N国が1議席で,それ以外が0議席である以上は,MMT推進派で且つれいわ新選組を支持しなかった人はどんなに多くてもその程度(=98万票+16万票+α)だと言うことである.もちろん,N国党の支持者の大半がMMTを当時理解していたとも思えないので,MMTを分かっていてれいわ新選組に入れなかった人はどんなに多く見積もっても40万人そこそこなのだろう.

 

では,最後に②に当てはまるような困った人物が(あくまで可能性の話だが)多く含まれる可能性のあるれいわ新選組の得票の分析をしてみよう.れいわ新選組は前回228万票を取った.この内訳は,おそらく

【タイプ1】 MMTを当時完全に理解していて,財政政策に完全に同意できたので,投票した人(右派からの転向が多く含まれる可能性あり)

【タイプ2】 MMTは理解していないが,経済政策には強いので「今この瞬間は財源とか言ってる場合じゃないだろう.こんなにデフレが進行してしまっているのだから!」と思った人

【タイプ3】 MMTは理解しておらず,常識的な財政破綻論者ではあるが「今この瞬間は財源とか言ってる場合じゃないだろう.自民党政治で,こんなに人々が苦しんでいるのだから!」と思った人(本質的に左派.立憲社民共産公明からの転向が多いか?)

【タイプ4】 経済的なことはあまり分からないが,「格差を是正する」というれいわ新選組の方針に漠然と共鳴できた人.

【タイプ5】 経済的な事はあまりわからないが,山本太郎氏等のいずれかの党員を個人的に支持した人(いわゆるファン).

【タイプ6】 自覚的に加谷氏の②に当てはまる人(エゴイスト,悪意ある愚民)

このタイプ1,2は経済理論に比較的強い人なので,仮に内面的には利己的だったとしても,国を滅ぼす②のタイプ(タイプ6)とは完全にかけ離れているだろう.

タイプ3,4も心根が優しいか,常識人なので,少なくとも「利己的」ではないと言い切れる.

タイプ5だけがともすれば危うい,騙されやすいタイプの人たちだと思う.ただ,仮にいたとしても高々228万人である.

タイプ6のような,付ける薬もない人は殆どいないのではないかと思う(そう信じたい).

 

まとめると,日本国民の中で多分加谷氏の言うような利己的で浅はかな人間(②=タイプ6)は少ないと思われる.なので,確定的ではないが,加谷氏の批判はやはり極論の一種ではないかと思われる.加谷氏が批判すべきは寧ろタイプ5だったのではなかろうか.タイプ5は自然な存在なので,彼らの判断ミスで国が滅ぶのならば,これもまた致し方のない事である.

 

【補足1】 

タイプ5で山本太郎氏以外のタレント議員のファン(立憲民主党市井紗耶香氏,奥村政佳氏,須藤元気氏等.尚,須藤氏は最近MMTを理解したとされる)にも多いのではないか(つまり上限が228万人に収まらないのではないか),という指摘は有り得る.ただ,歴史的には「タレント議員が大半を占めるような政党(タレント政党)が政権を取ったことは一度もない」ので,これこそ日本人の理性の証明であろう.だから,多少タイプ5の効果があっても,そこまでは致命的じゃないと現状考えられる.加谷氏はこの事実にどのように反論するのであろうか?加谷氏の言っている「日本国民(愚民)」というのは,本当にどこに存在するのだろうか?

 

【補足2】

野党共闘推進派で,且つれいわ新選組に不信感を抱いている人は,れいわ支持者のボリュームゾーンはタイプ4か5だと思っている,のではないだろうか.タイプ4の人は大きな問題がないが,タイプ5に危惧をもつのは,まっとうである.もちろん心情的には,タイプ5の人はあまり多くないと思いたいのだが,実際は分からない.タイプ5はタイプ6のようないわゆる愚民ではないが,雰囲気に流されている素直な人も結構いるのではと思うので,状況次第で今後この国がどうなっていくかのカギを握る場合もあるだろう.また,(我々)れいわ新選組支持者は,他党の支持者からはそういう目で見られている可能性があるということは,理解しておく必要はあると思う.特にタイプ1の人は,他党支持者を叱っちゃダメである.自分が見下しているか,不信感を持っている相手からの説教ほど,不快なものはないからである.

 

【補足3】

もしかしたらこれを最初に話すのが筋だったのかもしれないが,世の中には組織票というものがあり,既得権益を維持するために選挙前から投票先が決まっている人がいる.

そういう人たちはかなり多いのかもしれないが,一言言いたい.そんな行為を続けても,絶対あなたは今以上には幸せになれない(なぜなら,絶対にデフレから脱却できないから)ので,今すぐ組織票に加担するのをやめなさい.

 

【補足4】

「私は前回れいわに投票していない.れいわ新選組の党是なんて,知らなかったので」という人も結構いるだろう.ただ,そういう人は②に当てはまろうがなんだろうが,そもそも政治への関心が薄い人なので,加谷氏が気にする心配とは一切関係ないだろう.その中でも,「今の政治に失望したので投票に行かない層」も一定数居ると思うが,はっきり言って,「今の政治の現状に失望する感性は極めてマトモ」なので,彼らが政治への関心を復帰させたら,まっとうな政党に投票してくれることは間違いない.